公益法人向けの会計、人事給与、謝金、固定資産管理などを提供していた公益情報システム株式会社が、2026年6月29日(月)15:00をもって業務を停止したとのお知らせを公表しています。
同社の「事業停止に関するお知らせ」では、業績不振により経営状況が著しく悪化し、今後の事業継続が困難になったため、同日時で業務を停止したと説明されています。
クラウドサービスは便利ですが、クラウド上にしかデータがない場合、ベンダー側の事業停止によって、自分たちの業務記録へ急にアクセスできなくなる可能性があります。今回の件は、SaaSやクラウドサービスを利用する側にとって、データ退避と移行準備の重要性をあらためて示す出来事だと感じました。
月末直前の基幹システム停止が意味すること
2026年6月29日は月末最終営業日の前日です。経理や給与、固定資産管理をクラウドシステムで運用している法人にとっては、月次締めや支払処理、各種帳票の確認を行う時期に、基幹システムの継続利用に不安が生じたことになります。
特に公益法人の場合、通常の会計処理だけでなく、公益目的事業ごとの区分、収支相償、遊休財産、事業報告、行政庁への提出資料など、制度上の説明責任があります。単に「月次処理が遅れる」という話では済みにくく、過年度データや根拠資料を含めて、後から説明できる形で保全しておく必要があります。
まず退避しておきたいデータ
該当するサービスを利用している場合は、判断に迷うものも含めて、出力できるデータをできる限りPDF、CSV、Excelなどの形式で保存しておくことが重要です。
- 仕訳データ、総勘定元帳、補助元帳、試算表、決算書類
- 予算、科目体系、部門、事業区分、取引先などの各種マスタ
- 給与、人事、謝金、年末調整、支払調書に関するデータ
- 固定資産台帳、減価償却、除却、取得履歴に関するデータ
- 過年度の帳票、監査対応資料、行政提出資料の根拠となるデータ
- ユーザー一覧、権限設定、承認フロー、操作ログなどの運用情報
新しいシステムへ移行する場合、画面で見えている帳票だけでは足りないことがあります。移行先で再利用するためには、マスタ同士の関係、コード体系、日付形式、消費税区分、部門や事業の持ち方なども必要になります。
SaaSは使い始める時より、終わる時に差が出る
クラウドサービスを選ぶ時は、機能、価格、操作性に目が向きがちです。しかし、業務システムでは「解約時や事業停止時に、自社データをどう取り出せるか」も同じくらい重要です。
契約時には、少なくとも次の点を確認しておくべきです。
- 契約終了時のデータ返還条項
- 終了後の利用可能期間、移行猶予期間
- 標準エクスポート形式と出力できる項目範囲
- バックアップ取得権と取得頻度
- 倒産、事業譲渡、サービス停止時の扱い
- 監査や行政提出に必要な過年度データの保持方法
システムは導入時よりも、終了時の方が実務負荷が大きくなることがあります。特に会計、人事給与、固定資産のような基幹データは、移行先システムにそのまま入れられる形で出てくるとは限りません。
データ移行には変換プログラムが必要になることが多い
CSVやExcelを出力できたとしても、それだけで移行が完了するわけではありません。旧システムの項目名、コード体系、文字コード、日付形式、金額や税区分の持ち方を確認し、移行先システムの形式に合わせて変換する必要があります。
また、同じ取引先が複数コードで登録されている、過去の科目体系が現在と違う、固定資産の償却情報が帳票にしか出ない、といったケースもあります。こうした場合は、単純なコピーではなく、データの整理、突合、変換、取り込み後の検証まで含めた作業が必要です。
トリココシステムでは、既存システムから出力したCSV、Excel、PDF、データベースダンプなどを確認し、移行先システムに合わせたデータ移行プログラムの作成や、取り込み前のデータ整備にも対応できます。
まとめ
クラウドサービスだからデータが安全、というわけではありません。安全なのは、必要な時に自分たちのデータを取り出せて、別の環境でも業務を継続できる状態を作れている場合です。
今回のような突然の業務停止に備えるには、日頃からエクスポート手順を確認し、重要な帳票やマスタを定期的に退避し、いざという時の移行先や移行方法を考えておくことが大切です。
公益法人に限らず、会計、人事給与、販売管理、予約管理、顧客管理などをクラウドサービスに依存している場合は、一度「このサービスが急に止まったら、どのデータを、どの形式で、いつまでに取り出せるか」を確認しておくことをおすすめします。
